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24勝0敗の有頂天

日本シリーズ第7戦の開始直前、両軍のRosterを眺めてみると、
前日に先発した菅野と田中さんの名前があった。

この瞬間、「おいおい」と呆れそうになったが、巷では総力戦になるとの下馬評。
これでは消耗戦の間違いなんじゃないかって思った。

ご存知の通り、この日の先発だった美馬と杉内はともに第3戦で投げ合い、
美馬の好投が楽天に勝利を呼び込み、杉内の不調が巨人に災いをもたらした。

実績からすれば、明らかに杉内の方に分があったものの、
両者の力関係はいつの間にか逆転現象を引き起こしていた。

それでも、巨人が同点ないしは1点ビハインドでゲーム終盤を迎えていれば、
戦況としてはまだまだ有利といえた。
何故なら、ともにベンチ入りした投手陣の顔触れを見て、
9回までに田中さんが登板する可能性と比較して、菅野のそれはかなり低かったから。

ここで、両軍のブルペン入りした投手陣を再チェックしてみよう。

<巨人>澤村、内海、山口、マシソン、西村、青木高、今村、菅野

<楽天>則本、田中さん、斎藤隆、レイ、小山、長谷部、金刃、福山

巨人は、例え杉内が崩れたとしても、
ポストシーズンの定員の関係で救援に回っていた澤村の存在が大きい。

内海と則本は同じ条件(どちらも第1戦に先発、第5戦にも登板)。
だから、どちらも2~3イニング投げる準備は出来ていたとして、
もし美馬と杉内のイニング(1.2IPに対して6.0IP)が逆転していれば、
極めて悲惨な結果になっていたことだろう。

つまり、通常なら先発投手が賄うべき6~7イニングを、
巨人は杉内と澤村、そして内海の3人で回す試算が出来ていたのに対し、
楽天は明らかにカードが一枚足りない。
美馬がどこまで持ち堪えられるかが、勝負の分かれ目だった。

ゲームの行方は楽天に味方した。
美馬が6回まで投げきるなんて、誰が想像しただろうか?
しかも、3点のリードを保ったまま則本にスイッチすることが出来た。

7回に入って、残りアウト9個。これを誰が奪っていくかが、次の問題だった。
楽天にとっては幸いにも、スライダー中心に配球を組み立てた即本が、2イニングを36球。
自分がTwitterでつぶやいた「則本の投球数は30~40球、打者6~8人が望ましい」内容に納まった。

巨人打線は一見怖いが、「振りたがり」の打者で編成されている分、
振ることでしか投手の消耗を誘えない弱点がある。
美馬も則本も、とにかくバットを振らせた。
特に美馬の緩急は、ボールを追いかけようとする巨人打線との相性は抜群だった。

そして、スコアは3-0のまま9回に突入。
その前に、日本シリーズの歴史を振り返って見たい。時代を遡って、胴上げ投手になったのは誰か?

田中さん

これらの過去と、星野監督の切ったカードを照らし合わせると、
絶対的な一番手(つまりエース)がシリーズを締めることに固執した形跡は少ない。
そりゃ、日本一を決める試合に必ずしもエースが先発するわけじゃないから。

ところが、1970年代から1980年代にかけて、
シリーズにおける先発投手のリリーフ転用が目立つ箇所がある。
西武の2連覇なんて顕著な例だが、エースの東尾を完全に後ろに回して、
継投策との葛藤にケリをつけている。
その役目を後に工藤が背負い、途中から使われ方に嫌気が差して、反抗モードに移ったという過去もある。

これを目の前で体験したのが、星野監督だった。
ご存知の通り、星野監督は1982年には選手、1988年は監督として西武と対決している。
この頃の西武は、正式なクローザーを立てるまでに至らず、また人海戦術の匠を競う時代でもあった。
江夏豊がリリーフに転向して以来、クローザーの重要性を説く考えはあったが、
それを具体化できるチームは限られていた。

8月後半にラズナーが故障して以来、継投策に苦心してきた楽天。
それでも、勝ち進んできた。

パ・リーグ優勝、CS勝利の日は、田中さんに9回を任せてなんとか乗り切った。
限定クローザー起用は、どちらも前の登板日から間隔が空いていて、
その後直ぐに登板する予定もなかったので、酷使と叫ぶ声はほとんど見当たらなかった。

則本は、かつての東尾や工藤の役目を担ったというのが正しい。
リリーフ陣が尽く崩れた楽天にとって、事態を懸念するファンは多かったと思うが、
星野監督の脳裏には自分を破った常勝球団の継投策が浮かんでいたに違いない。
これを事前に決断したことによって、第4戦はハウザー、第5戦は辛島というプランが出来上がり、
4戦目はある意味捨て試合と考えていたのだろう。

東京ドームの試合以降、楽天の失点プロセスは、
ほぼ星野監督の理想通りに進んでいったといっても過言じゃなかった。

1箇所だけ、第5戦で則本が9回に追いつかれたこと、
4イニングの予定が5イニングになってしまったこと。
第7戦での起用は、出来る限り後ろのイニングになることが求められた。


話の展開をようやく第7戦に戻すが、9回マウンドに上ったのは田中さん。
7回からウォームアップを開始して、8回にも再アップ。
解説の古田氏が「全力投球をしているので、登板はあり得る」という説明がタイムリーだった。
登板が現実になると、今度は同じ解説の工藤氏が肩の張りをしきりに心配していた。

最後の勝負に出た田中さんは、先頭の村田に対して、
いつもと変わらないスプリットのブレーキとファストボールの球速。
村田にはセンター前に弾き返され、ロペスにはライト前に運ばれた。
ここが1点リードしかない場面だったら、息を呑むような瞬間になっていただろうが、
幸いにも巨人は下位打線に向かっていた。

二死1、3塁となって迎えた矢野は厄介に見えたかもしれないが、
次の打席に入るはずだった長野は、負傷してゲームを退いていた。
亀井はそのまま打席に入ったとしても、その次は松本。
残っている代打で期待が持てそうなのは、谷が精一杯だった。

第6戦と第7戦で田中さんが投げた球数は、160球と15球。
これを酷使と叫ぶ声が上がったのは、ある意味自分としてはとても嬉しい。
しかし、この手の話は思慮深く考えなければならない。

まず、酷使というものは、JISマークやISO9001のような基準ではない。
ブラック企業なら、残量時間などを目安にして測ることは出来るが、
野球で言う酷使は「常識外」という主観が基礎になっている。

だから、主観が主観を呼んで相当な規模になれば、一応の世論は出来上がる。
しかし、規模は基準ではないわけだから、基準が無いことを理由に世論は論破されるか、
そのうち記憶の彼方に葬られるかだ。

もし、仮に「先発投手はリリーフで起用しないことが基準」と考える人が出てくるとしよう。
これはガチを超えてガチガチな考えである。
基準とするなら、日本シリーズに限らず公式戦でも同じ考えをもつべきだ。
先発からリリーフに転向するときも、許可を取らなければならない。

田中さんの160球プラス連投は、酷使という問題以外にも3つのテーマを残した。


<前日160球投げたエースが連投することによる楽天の勝利確率>

結果からしてこれは正解になってしまうが、
そこまでのプロセスが完璧だったことは前にも書いた。

3-0というスコア、美馬が巨人打線を分断し6回を投げても打者23人
(打順2回り目プラス4人)で済ませたことが大きかった。

楽天打線が7回まで毎回走者、6回まで毎回2塁に走者を進める攻撃をして、
試合の主導権を手放さなかったことも大きかった。

巨人は長野にアクシデントが発生、代打の切り札と呼べる存在もいなかった。

これらの要素に加えて、ブルペンでの田中さんの状態(必ずチェックしていただろう)を合わせた上、
星野監督が決め打ちしたと思われる。

仮に、9回に田中さんではなく、別の投手をリリーフに立てたと考えてみよう。
3点差を守りきれれば良いが、もし同点に追いつかれるような展開だったとしたら、
ここで3人くらいはブルペンのカードを切っていたに違いない。

優先度から入って、斎藤隆、長谷部、小山あたりか。
延長戦に入って、残っていたのはレイ、金刃、福山、そして田中さん。

最大15回まで延長する日本シリーズで、どこかで田中さんを出すタイミングはあったはず。
タイスコアなら1イニングで済まされない可能性は高かった。

結論としては、全てが好転した上で田中さんに最後を託した判断は、結果に準じても良いと思う。


<楽天の来季以降へのチーム作り>

これはどうにかなる点と、どうにもならない点があった。
来季以降のチームを考えると、終盤を締めて欲しかったのは青山、長谷部、釜田、菊池保、宮川ら。
ところが、青山や釜田はいないわ、長谷部は信頼度が落ちてるわ、
菊池保は行方がわからないわ、宮川が危険球で退場するわと、チームの未来を託す存在がいなかった。

斎藤隆とレイと小山は、彼等には悪いが引退が迫っているベテラン。
地元民斎藤で締めるシナリオも、これだと田中さんが出てくるのと大して変わりがない。

田中さんの完投と連投については、志願したという説が定着している。
実際、会見でもそう答えていたとのことだが(見ていない)、
何人かの声を聞くと、どこか余所余所しい雰囲気もあったという。

この志願という言葉。古い日本人なら、志願兵という言葉が蘇るだろう。
お国のため、家族のため、みんなのため。
自分のために志願するという話は、一度も聞いたことがない。

田中さんが本当に志願したのかどうか?
たぶん、本人に聞いても真相はわからないんじゃないかって気がする。
要するに、ハッキリとした意思があったかどうか。

「行けるか?」「行けます」のような、本人に言質を取れば勝ちみたいな話は
興醒めする人も増えてきているが、自らが志願とあれば、これは口を出せない。

普段と違うコンディションで、しかも役回りの違うポジションで志願して、抑えられる自信はあったのか?

仮にあったといても、それでは相手を馬鹿にしている。巨人を舐めすぎている。

自分の憶測では、田中さんは「投げても良いですよ」程度の認識だったんじゃないかと思う。

エースといえども、並み居る先輩たちを差し置いて「俺が投げます」みたいな意思は無かったと思う。

メジャー入りを希望する投手として、日本人の美徳も感じていなかったと思う。

監督から期待されているのを感じていたのだと思う。

チームメイトが自分に頼っているのを実感していたんじゃないかと思う。

ということで、星野監督は前置きすることなく、

「じゃあ、まさひろ。いいか?」

「いいッスよ」

で成立。

当然、来季の楽天投手陣は、田中さんが抜ければ骨抜き状態が心配される。


<24勝0敗の有頂天>

これが厄介、とても厄介。
何が厄介なのかというと、楽天と星野監督、そして田中さん以外の野球人が、これを悪用することである。


最も懸念されるのは高校野球。

「プロだってエースを非常出勤させるのだから、高校野球でエースが連投するのは当然」

「(近い未来に)田中は連投しても大丈夫だったじゃないか。だから連投はOK」

「采配とは勝負勘が大事である。星野監督がそれを証明した」

などなど。

つまり、有頂天になりそうなのは、田中さんというわけではなく、
酷使の境界線で指導する監督クラスの慢心ということ。


野球選手を夢見る子供を持つ親にしてもそうだ。


今回の田中さんの連投は、酷使の末に起きたものではない。
今になってようやく今季公式戦のデータを集計したが、
田中さんの年間投球数は9月26日のリリーフ登板を含めても3000球に届いていない。

24勝もしておきながら、実は投球過多の末に作り上げた記録ではなかった。
交流戦以外の期間では、全て中6日以上空けて先発していた。
WBCというエキストラが関係していることも否定出来ないが、
この一年間はじゅうぶん配慮された上での最後の連投だった。


酷使のように見えて酷使ではなかった。これが日本シリーズでの田中さんの姿だった。


ただ、プロとして手本を示すような起用も忘れないで欲しかった。
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